折紙彗星

色々と書く

GalileoGalilei「ALARMS」を最近ずっと聞いている

GalileoGalileiの3枚目のアルバム、「ALARMS」とんでもない名盤だ。

GalileoGalileiは北海道稚内市出身のバンドで2016年に活動終了を制限した。

現在は元メンバーらが「BBHF」というバンドで活動している。

さて、GalileoGalileiは2枚目と4枚目の印象が強めであるため「ALARMS」は印象が薄くなりがちだが私は3枚目が一番好きだ。2枚目「PORTAL」はエレクトロ・ポップに影響を受け、青春爽やかバンドというイメージを覆した節目となる作品だった。4枚目「Sea And The Darkness」は彼らの最後の作品となった。彼らの音楽性が成熟し、もうこれ以上は「GalileoGalilei」の名前で音楽を続けられなくなったことをこの作品が示した。エレクトロポップやインディロックに影響を受けつつ日本のバンドの曲として昇華させた作品だ。

「ALARMS」はその間に挟まれているが、エレクトロ的な要素は2枚目より控え目でバンドサウンドメインであり、しかしながら「PORTAL」よりも成熟していることを感じる。だが「Sea And The Darkness」ほど、ダークな印象はなく、どちらかというと明るめな印象を受ける作品だ。1曲ごとの完成度も高いがやはりアルバムを通して聴くべき内容となっている。その中でも私が特に気に入っている曲はこちらだ。

 

3.パイロットガール

このアルバムの個人的ベストナンバー。

まず歌詞が可愛い。いつも「僕」よりずっとずっと先に進んでいってしまう、行動的で予測不能な彼女。彼女に僕は追いつけないし理解できないのだけど、僕の足りないものを持っていてそこが好きなんだ。それは必ずしも恋愛だけの話ではなくて憧れでもある。このような歌詞はうまく書かないと安っぽくなってしまうと思うのだが全くそんな印象を感じさせないのは彼女をパイロットガールと表現した巧さにあると思う。

彼女はパイロットなので自分で操縦桿を握ってすごいスピードで飛んでいく。パイロットに対するあこがれというのは誰しも少なからず持ち合わせていると思う。憧れる対象である彼女に対する比喩としてパイロットを持ち出したのがもうぴったりで本当に天才的であると思う。

曲としては3分間程度で本当にあっという間に終わってしまう。GalileoGalileiは所謂JPOPの王道的展開の曲をあまり作らないと思うのだがこの曲は一気に盛り上がっていく疾走感のある曲だ。シンセのサウンドは控え目でこれぞギターロックと言えるようなバンドサウンドにかっこよさがあり、「lemon」や「夜に駆ける」と同じくらい流行ってもいいのにと思えるような曲だ。

4.処女と黄金の旅

メルヘンチック、ドリーミー、幻想的な歌詞とサウンドが特徴の曲。「キャンディ」「誰もいない遊園地」「サーカスの歓声」「甘い綿菓子」「木馬にキス」「金のマグカップ」「オオカミの頭」「ロバの耳」...ピノキオからヒントを得た曲だそうだが、少女の迎える運命に不穏なものを感じる。

6.潮の扉

アルバムで二番目に好きなナンバー。

米津玄師の「打上花火」の間奏のギターリフが好きなのだがあれは短すぎると思う。もっと一分くらいかき鳴らせばいいのになあと思いつつヒットさせるためには間奏は短いほうが良いのだろうなあとも思う。この曲のギターリフも打上花火のように夏の海のような力強さと爽やかさを感じるのだが、打上花火のように短くないので思う存分その心地よさを楽しめる。また、特にベースがよく効いている曲でそのあたりに注目して聞いてもまた面白い。

7.サークルゲーム

劇場版「あの花」の曲でキャッチ―な曲なのだがアルバムに入っても全く浮いておらず、うまく溶け込んでいる。アニメの主題歌でありながら音楽性を崩さないのがGalileoGalileiの良いところだと感じる。青い栞よりもうまくそのあたりの調和がとれていると思う。

13.Birthday

こんな曲を最後に持ってこられたらどんなアルバムでも名盤になるわというような曲。老いを歌うような前の曲コバルトブルーから輪廻が巡ってまた誕生する曲。やたらと覚えやすく、「エモい」サビだが、GalileoGalilei特有の涼し気なサウンドは失われていない。まるで映画を一本見たかのような満足感がある曲だが実際のところは4分ちょっとの長さであることに驚く。

 

アルバム全体に統一感があるものの、どの曲も個性が強く何回聞いても飽きることがない。2曲目のロンリーボーイ、3曲目のパイロットガール、4曲目の処女と黄金の旅は少年性、少女性が高めの曲。6曲目潮の扉、8曲目フラニーの沼では青年的で、9曲目愛を、10曲目死んだように、11曲目Oh,Oh!はどちらかというと大人な歌詞。12曲目コバルトブルーは「老い」が感じられる曲とアルバムが進むにつれて人間がだんだんと年を重ねていくかのようで、13曲目Birthdayで再び新たな命が生まれる。この構成があまりにも見事で聞かなければ損な名盤だ。